弁護士による多額の横領事件について

2022年2月28日、私と同じ熊本県弁護士会所属の弁護士による、多額の横領事件が報道されました。その金額は、1億を超えるとも報道されており、これほどの多額の横領事件が身近に起こったことに衝撃が隠せません。

被害に遭った方の、「弁護士だからといって信用してはいけないと思った」という言葉は、全ての弁護士に重く受け止められなければなりません。私たち弁護士の仕事は、お客様をはじめとする関係者の方々との信頼関係によって成り立っていると言っても過言ではありません。その信頼をこのような形で裏切ることは、決して許されることではないのです。

横領をした弁護士とは知らない仲ではないので、心配する気持ちがないとは言えませんが、それ以上にご迷惑をおかけした関係者の皆様には、同じ弁護士会所属の弁護士として申し訳ない気持ちでいっぱいです。未解決事件の引き継ぎなど弁護士会を通じて募集があった場合には、お手伝いしたいと思います。

今回の事件で思うのは、どうして周囲が異変に気付くのがこんなに遅かったのかということです。大抵の弁護士には、担当の事務局がいますので、弁護士が横領などをすれば、事務局には分かると思います。これだけ多額の横領をしたのに、誰にも気付かれなかったのは、担当する事務局がいなかったか、弁護士がその案件については事務局に関与させなかったからなのかなと思います。どんな仕事でもそうですが、チェック体制は絶対に必要です。成年後見人の場合は家庭裁判所による監督を受けますが、原則として家裁への報告は1年に1回なので、日常的なチェックとは言えません。やはり日常的にお金の扱いを複数でチェックする体制を作ることが必要です。

そのためにも、事務所の風通しの良さは大切だと思います。事務局が、おかしいと思ったことを弁護士に率直に言えることは、ミスを防ぐためにも重要なことです。弁護士に言いたいことを言えないという事務局のためには、弁護士会も事務局の相談窓口を設置することが必要なのかも知れません。やはり、何事も、困ったらすぐに誰かに相談するということが重要なのかも知れませんね。