ノーモア・ミナマタ第2次訴訟で高岡滋医師の証人尋問が実施されました。
昨日6月15日、熊本地方裁判所においてノーモア・ミナマタ第2次訴訟の口頭弁論期日が開かれ、原告側申請証人である高岡滋医師の証人尋問が実施されました。
高岡医師は、神経内科リハビリテーション協立クリニックの所長であり、長年にわたり不知火海沿岸地域の住民の健康調査や診療にたずさわり、メチル水銀曝露を受けた方々と曝露を受けていていない方々を調査して分析し、多数の論文等を発表されてきた医師です。また、原告らを水俣病と診断した医師団の中心となっている方です。
高岡医師は2年前にもこの裁判の証人として水俣病の病像について証言していただきましたが、今回は各原告の診断書などを踏まえて、それぞれの原告が水俣病であることの証言をいただきました。
原告側の主尋問では、高岡医師は、主に次のようなことを証言しました。
①天草地域を含む不知火海沿岸地域では魚介類を介したメチル水銀曝露を受けたことがデータ上から明らかであること。
②原因企業のチッソ株式会社が水銀排出を停止した昭和44年以降であっても不知火海のメチル水銀汚染が継続していたことはデータ上も明らかであること
③患者にみられる表在感覚障害の範囲が短期間に変動していたとしても、それは中枢性の疾患の特徴であって、医師の所見は信用できること。
④行政による公的検診では、所見の取り方や正常異常の判断基準が明らかでないほか、そもそも診察した者の氏名も明らかにされておらず、信用できないこと。
⑤糖尿病や頚椎症・腰椎症など他疾患にかかっていても、それだけでは患者にみられる四肢末梢性や全身性の表在感覚障害などの神経所見は説明ができず、水俣病であることを否定することはできないこと。
⑥共通診断書の作成手順に従って診断された原告は、水俣病であると考えて間違いないこと。
⑦不知火海沿岸地域の住民の多数を実際に調査し研究してきたのは高岡医師を初めとする医師団であって、被告国・熊本県は実態解明を怠り批判ばかりしているが、そのような態度は専門家として許されないこと。
以上に対し、被告らからの反対尋問では、次のようなやりとりがなされました。
この原告が曝露したメチル水銀濃度を計算したことはあるか。
→いいえ。
頚椎や腰椎の画像所見を確認していなくても水俣病といえるか。
→はい。
触覚と痛覚の範囲が異なるがそれでも水俣病か。
→はい。
感覚障害に左右差があっても水俣病か。
→はい。
心理的影響で感覚障害が現れるようになった可能性はないか。
→ほとんどないと考えられる。
(糖尿病や頚椎症・腰椎症などにみられる)深部腱反射の低下があっても水俣病か。
→はい。
このように、いずれも主尋問で既に答えている質問や、あまり意味のないことを確認する質問が多く、高岡医師の証言の信用性を弾劾するものではありませんでした。
高岡医師の証言によって、原告のみなさんが水俣病であることはますます明らかになったと思います。
次回期日は、8月3日(水)10:00~です。
今度は被告側申請証人である水澤英洋医師の証人尋問が実施されます。
被告側の医師がいったいどのようなことを証言するのか、ぜひ多くの方に傍聴していただきたいと思います。